デジタルデータに証明書を付与することで、所有権等を証明することのできるNFT。
しかし、所有権が証明されると言ってもそれは仕組み上の話で、法的な意味での正式な所有権とは限りません。
そのため
「NFTの情報って法的には所有権として認められるんだろうか?」
「実際に盗まれる等の被害に遭った場合、警察は法的に認めてくれるのだろうか?」
という事が気になりませんか?
私は元警察官ということもあり、とても気になったので実際に警察本部に問い合わせをしました。
そこで今回はその問い合せに対する回答内容を踏まえて
『NFTで証明される所有権を警察はどのように捉えているのか?』
をわかりやすく説明します。
この記事を読むことで
◎、NFTの情報を警察がどのように捉えているのかの現状を知ることができます
◎、実際にNFTに関連する物が盗まれたり、紛失した場合の参考になります
◎、現職警察官がNFT事案を扱い困った際の参考にもなります
それでは、そんなNFTの所有権について、警察からの回答内容を一緒に見て行きましょう!
まず初めに、今回私が問合せを行ったNFTサービスについて説明をします。
私はNFTの新しい活用方法であるWraptagというサービスに関して警察に問い合わせました。
Wraptagとは、現物とNFT情報を連係させて、現物の所有権証明等をするサービスです。
今まで失くしたり、盗まれたりしても所有権を証明することが難しかった、靴とか、カバンとか、ビニール傘とかの所有権をNFTによって証明できます。
詳細はこちらの記事を読んでください。
>>>世界初!NFTの新しい使い方『WrapTagとは?』をわかりやすく説明します。
ここでは、仕組みを簡単に説明します。
現物の写真を撮影し、専用のICチップ入りのタグにNFT情報を書き込みます。
そして、そのNFT情報入りのタグを現物に付けておくことで、現物とNFT情報が連携されるというモノです。
今回私は警察に対して、このNFT情報が連携された現物を
◎、失くした後に発見された場合
◎、盗まれた後に発見された場合
このNFT情報を所有権の証明と扱うのかどうか?をそれぞれ問い合わせました。
「なんで普通のNFTじゃなくて、現物と連携させた新しいサービスで問い合わせたの?」
と思うかもしれませんが、デジタルデータだけのNFTが盗まれた場合、それは窃盗罪云々ではなくハッキング被害の方で捜査されますので、敢えて現物と連携されているこちらのサービスで聞きました。
なお、流石に回答書をそのまま掲載するわけにはいかないので、内容を抜粋したり、私で表現を少し変えたりして紹介していきます。
まず落とし物の場面についてです。
回答内容を紹介する前に、落とし物に関する警察官の取り扱いを軽く確認しておきます。
落とし物が交番に届いた場合、警察官はしばらく保管しておきます。
そして、落とし主が現れると本当に本物の持ち主かどうかを確認して、確認できれば返します。
逆に本当の持ち主か確認が取れなければ下手に返せません。
例えばビニール傘。
これだけ届いた状態で
「そのビニール傘は私のです!」
と言われても、あまりに多く出回り過ぎており、本当にその人の物かわかりませんよね。
それを証明することもできません。
そこでWraptagが付いていた場合、NFT情報だけが所有権を証明する頼みの綱になります。
このようなケースについて
「このような場面に遭遇した場合に、警察官はNFTの情報を元に、キチンとした証明がされたと判断して返すのかどうか?」
という問い合わせです。
まず結論を言うと
『様々な状況を総合的に勘案して判断する。NFTだけを根拠に返すことは考えにくい』
とのことです。
これだけではわかり難いと思いますので、警察は何を言っているのか、もう少し具体的に説明しますね。
◎、拾われたときの時間や場所、落としたとする時間と場所
◎、特有のような特徴
等々と組み合わせて判断するため、NFTもその一つの判断材料にはなり得る。
けれど、
『NFTだけを根拠に「これは貴方の落とした物に間違いなさそうですね!」と判断して返すことはまずない』
という事ですね。
これはそもそもNFT自体がまだそこまで世間に広まっていませんし、ましてやNFTで現物の所有権を証明する取り組みは更に希少です。
そのため現時点(2022年1月20日)において、それはNFT云々関係なく、そのようなモノを付けているだけで特別な特徴になり得ますよね。
そのような形で返還するので、NFT情報だけが特別ではないという趣旨の回答でした。
次に犯罪被害品としての扱い方についても質問しました。
一見
「どっちも似たり寄ったりじゃん!」
と思うかもしれませんが、落とし物と、犯罪被害品とでは警察的には毛色が大きく違うため、敢えて分けて質問をしました。
この辺りの違いも含めて質問内容を説明します。
先程の落とし物の処理は警察官の行政職員としての権限で行います。
行政とは、要は役所の職員としての立場でという事です。
一方の犯罪被害品を扱う場合は、司法の権限で行います。
司法とは、要は裁判に関する権限でという事です。
行使する権限が違うので、扱い方も変わってくるわけですね。
特に司法領域では、ちょっとしたミスや抜け一つで全てが崩壊してしまうこともあるくらい厳格さが求められますので、一般的にミスしても取り返しがつくことの多い落とし物(行政領域)以上に厳重に扱われます。
このような違いを知った上で、市販品として大量に売られているバッグが犯罪被害品として発見されたとします。
その後、被害者が被害届を出す前に
「バッグを盗まれてしまいました!届いていませんか?」
と取りに来た場合、
「NFT情報を根拠に、この人をこのバッグの持ち主と認定して返すのかどうか?」
という問い合わせをしました。
これも結論を言うと
『総合的に勘案して判断する。NFTだけを根拠に被害者を名乗る人に返還することはしない。』
でした。
つまり、落とし物と同じように扱うという事ですね。
ただし、その判断基準が被害品の方がより厳格ということですね。
これに関しては後になって質問に落ち度があったことに気付きました。
というのも、そもそもの話として大量に売られている市販品なのに犯罪被害品として扱っている時点で、既にNFT以外に何かしら判断材料があるんですよね。
それに、もし被害品かどうか判断が付かない場合には、NFT情報を元に警察から所有者に連絡を取り、本人に事情を聞けば良いだけの話です。
これは、そもそも仮定の段階からあまり意味のない質問でしたね。
という事で警察は、現時点でNFTの取り扱いに関して
◎、NFT情報だけを根拠に所有権を判断することはない
◎、所有権を判断する材料の一つとしては考慮する
という結果になりました。
まだNFTは新しい存在で、今後違った形のモノも登場するかもしれません。
そのようになるとまた扱い方が変化するかもしれませんので、今後のNFTの進化にも注目していきましょう!
※忙しい中、こんな問い合わせにキチンと調べて回答してくれた
◎、総務部会計課
◎、刑事部刑事総務課
◎、生活安全部相談課
の方々、本当にありがとうございました。
知り合いがいてもおかしくない部署なので、知り合いだったら付き合ってもらってゴメンね!
今回はNFTの所有権証明を警察はどのように扱うのかについて
①、今回問い合わせたWraptagというNFTサービス
②、落とし物としての扱い方
③、犯罪被害品としての扱い方
という流れで見てきました。
これでNFTの情報を警察がどのように捉えているのかの現状を知ることができましたよね。
実際にNFTに関連する物が盗まれたり、紛失した場合の参考になったと思います。
現職警察官がNFT事案を扱い困った際の参考にもなるのではないでしょうか。
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